vol.1 デザインの力で紡ぐ総合知! “芸工”の世界に迫る

[上]限界集落に暮らす女性たちは、古くから続く籠づくりにより絆を深め、コミュニティを維持することができている。[下]作品で描かれるナミビアの風景からは砂漠の色彩が生き生きと伝わり、まるで現地を訪れているかのよう。
コミュニティ維持のために芸術が 重要な役割を 果たしている

「社会の周縁で孤立する人々が手を取り合うとき、芸術が果たせる役割は?」

サラントウ先生の母国であるアフリカ南西部の国・ナミビアでは、世界最古の海岸砂漠であるナミブ砂漠が南北1300㎞にわたって続いています。この砂漠は人々を社会的に周縁化させてしまう一方、その土や酸化物が、孤立しかけた人々をつなぎ留めています。ナミビアの自然環境は現地の人々にとってインスピレーションの源であり、籠やその他の芸術活動を楽しむ場を作り出しています。作品の色付けの原料としてオチゼと呼ばれる黄土や金属の錆がよく使われるため、まるでナミビアの風景そのままを閉じ込めたような色合いの作品が仕上がります。また、砂漠で分断された過疎地域に住む人々は、制作活動を通して集まり、語り合う機会を持つため、コミュニティ維持のために芸術が重要な役割を果たしているという側面もあります。このように、サラントウ先生は地域特有の社会的課題を解決するために、自然環境がどのように地域のアイデンティティを育み、持続的な芸術活動を支えていくのかを研究されています。

「芸工には社会的課題解決のために強いビジョンを持った人が多い。芸工の研究をもっと国際的にも盛んにしていきたい」と語っていただきました。

芸術工学研究院 ストラテジックデザイン部門 SARANTOU MELANIE教授